更新日:2023.01.10 公開日:2016.10.13 身近な湿度のおはなし

本の保管と湿度管理

秋も深まり、気温が下がり乾燥する季節に入ってきました。

乾燥が進むとインフルエンザなどのウイルスが蔓延したりとヒトに対する影響を真っ先に思い浮かべるかと思いますが、実は私たちの身の回りのモノも、湿度により色々な影響を受けます。

今回のテーマは"本"についてです。

本に使われる紙は色々な種類がありますが、紙の特性として一番に上げられるのが、吸湿性の高さです。

紙は植物繊維が主な原料です。
植物繊維は元来水分を保有しているため、水分変化にとても敏感です。
その為、紙は水分や湿気を吸い込むと伸び、乾燥すると縮みます。
急激な温湿度変化の繰り返しによりこの吸放湿が繰り返されることで、いわゆる「波打ち」や「おちょこ」といわれる現象が起こり、
紙の変形が進むのです。

では大切な本をより良い状態に保つには、どのように保管するのが望ましいのか。
古くからの本を多く貯蔵している図書館では、低温低湿で変動のない環境で保存することが望ましいとされています。

「低温低湿」といっても様々な考え方がありますが、相対湿度は大抵、60%未満(55%前後)で安定するのが重要と言われます。
これは、紙のゆがみはもちろん、接着部分の剥離等の劣化が発生しにくい環境を作ることからも考えられている基準です。

尚、国立国会図書館では「書庫内でヒトが作業できる温度(22~27℃)」で「65%以下の湿度」で安定させることを目標とし、1年を通じてできる限りの対策をしているようです。

ちなみに、昔の書籍に使われていた羊皮紙(動物の皮をのばし乾燥させた、紙の変わりに多く使用されたもの)では、50%以上の湿度が望ましいと考えられています。

その他本に対する影響を防ぐ方法としては、ホコリの少ない環境を保つこと、空気を循環させ湿気のたまりやすい場所をなくすこと、極端に光が当たる場所をなくすことなどが、本にとってやさしい保管条件となるようです。

身のまわりにある全てのモノは、湿度と切っても切れない関係でつながっていることがわかります。

関連リンク