更新日:2023.01.06 公開日:2022.01.26 身近な湿度のおはなし

発熱インナーと水蒸気

発熱素材のインナーは、近年の冬の必需品と言っても過言ではない存在になりました。
とっても薄い素材なのに、なぜ綿などのインナーよりも暖かくなるのか、不思議ですよね。

それには、“凝縮熱”が使われています。凝縮熱は、エアコンが部屋を暖める仕組みにも使われている現象です。
エアコンは外気の冷たい空気を取り込み、その水蒸気を凝縮して水にします。この変化の際に生まれる熱を使って、
暖かい空気を室内に送り出しています。 凝縮熱とは、気体を液体に凝縮する際に熱が発生する現象です。

発熱インナーは吸湿発熱インナーとも呼ばれ、肌から出る水蒸気がポイントです。
体から出る汗や不感蒸散による水蒸気を繊維が吸着したときに発する熱を利用して、体を温めています。

もちろん、昔からの冬服の定番素材ウールや綿など、ほかの天然繊維も同じように凝縮熱によって体を温めることが可能です。 しかし、その能力を最大限に発揮できるよう、繊維を細くして全体の表面積を増やしたものが「吸湿発熱素材」です。 表面積が増えると、水分をより多く含むことができるため、よりたくさんの熱を放出できます。
そのため、ほかの素材のインナー比べて、より一層体が温まります。

とても便利な吸湿発熱インナーですが、注意するべき点もあります。
水蒸気を吸着して発熱するため、汗をたくさんかくと、たくさん発熱してしまいます。
体温が上がって体温を下げたい状態でも発熱してしまうので、登山や運動などでの着用はおすすめできません。
また、素材が吸着できるだけの水分を吸い取って、飽和状態になると、気化熱により体が冷える可能性があります。
気化熱とは、水が水蒸気に変化するときに周りから熱を奪うもので、凝縮熱とは反対の現象です。
その点、ウールなどの天然素材は、吸収した水分をゆっくり蒸発させるため、汗冷えを抑える効果があります。

冬の必需品、発熱インナーが薄くても温かいのは、天然の素材と同じ凝縮熱を利用しているからでした。
それぞれのメリット・デメリットがあるので、着用する場面に合わせて素材を選びましょう。
衣服での体温調節もうまく取り入れて、暖房器具の使用を減らすことができれば、部屋の乾燥対策や省エネにもつながりますね。

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