更新日:2024.03.15 公開日:2022.04.25 身近な湿度のおはなし
春は火災が多い?
気温も上がり、暖かい気候になってきました。
お花見にもお散歩にもピッタリな過ごしやすい季節ですが、最近火災のニュースが多いと思いませんか?
実は火災の発生が一番多い季節は、春だということをご存知でしょうか。
下のグラフは、消防庁から発表されている令和元年の火災発生件数をまとめたものです。
火災の危険性は冬の12~2月ごろが高いように思いますが、グラフを見ても分かるように実際には春に多く発生しており、 特に4、5月が最も多くなっています。
なぜ春に火災が多いのか、それは一年で最も乾燥している季節が春であることと、強い風が吹く季節であることが考えられます。 意外に思われるかもしれませんが、過去の気象データで相対湿度を見ると、冬だけではなく春も乾燥していることが明らかです。札幌・東京・大阪の気象データで、1日の最小相対湿度を調べてみると、上位10位内の9割が春の記録でした。札幌・大阪に関しては、10位すべてが4~6月初旬の記録です。
参考:気象庁 気象データ(1950/1~2024/1)
春は乾燥していて着火しやすい気候であるうえに、強風が吹くことで大きな火災を引き起こす可能性が高くなっているのです。
札幌市が実施した、春先の火災危険についての実験結果を見ると、春に火災が起こりやすいことがよく分かると思います。 実験は、たばこの吸殻を置いてから、周囲の枯草に燃え移り炎が上がるまでの時間を計測したものです。 春の気候を再現した湿度30%・強風の空気と、夏の気候を再現した湿度80%の空気との環境下で時間を比較すると、 春の気候では約3分で炎が上がったのに対して、夏の気候では約10分かかりました。
また、同じく湿度30%と80%の異なる環境下で1日置いた木材に同時に火をつけて、火の広がり方を比較した実験では、 湿度30%で1日置いた木材の方が、急速に燃え広がる結果となりました。
出典:札幌市 火災再現実験動画「春先の火災危険についての実験」
乾燥した気候は、着火しやすさや、火の広がり方にも大きな影響を与えていることが分かります。
寒い冬から暖かい気候になってくると、火災の危険が下がるように感じるかもしれません。 ですが、気温が高くなってきても、春は乾燥の季節だということを忘れず、火の元には十分気を付けましょう。