更新日:2023.01.06 公開日:2022.05.25 身近な湿度のおはなし
湿度が高いと腐敗する?発酵が進む?
ジメジメとした嫌な季節がやってきました。 梅雨の時期は、不快指数も高まりますが、食品の腐敗も気になる季節です。 相対湿度が高くなるとカビが発生しやすくなったり、腐敗して悪臭がしたりと 食品の長期保存が難しくなります。 また、これから夏にかけては食中毒を引き起こす危険性も高まるため、 注意が必要な季節です。 一方で、腐敗すると困りますが、発酵に適した時期でもあります。ここで「腐敗」と「発酵」は、どう違うのか、ご存じでしょうか。
実はどちらも同じことが起こっており、微生物が増殖して食品成分を分解することで生じている現象です。 呼び方が異なっているのは、人間にとって有益か、有害かで分けて呼ばれています。 例えば、蒸した大豆に枯草菌が増殖して納豆になれば、 においが強く出ていても「発酵食品」と呼ばれますが、 煮豆に枯草菌が生えてにおいが出ると「腐敗」と呼ばれます。 人が食べて美味しいと感じるか、という曖昧な線引きなのです。
もう一つ、湿度が高い時期に増えるのが食中毒ですが、 腐敗したものを食べる=食中毒というわけではありません。 食中毒は、サルモネラ菌、カンピロバクター、ノロウイルスなど特定の菌やウイルスによって 引き起こされます。中には少量の細菌でも食中毒になる細菌もあるため、腐敗が進んでいなくても、 食中毒を引き起こす可能性があります。また腐敗の場合は、 色やにおいの変化が起こり食べる前に気づくことができますが、 食中毒の菌が付着していても、見た目の変化が無く、気づかずにそのまま食べてしまう 危険性があるので注意が必要です。
他にも似た言葉として、「熟成」という言葉もよく使われています。 こちらは微生物の働きに限定されておらず、例えば、近年人気となっている「熟成肉」は、 時間をかけて保存することで、肉が持つ酵素によってうまみ成分(アミノ酸)を増幅させています。 こちらは長期間かけて熟成させるため、温度、湿度の管理が重要になります。
パン・納豆・チーズの発酵、ワインの熟成など、いずれも相対湿度80~90%と、高い湿度が望ましいとされています。この時期にぴったりですね。 細菌やウイルスは、基本的に高温多湿を好むので、気温20℃以上になると活発になり、気温25℃以上、湿度70%以上で一気に増殖する場合が多いです。 しかし、うまみを引き出す発酵や熟成には不要な別の微生物が増殖する可能性も高まります。 これからの季節は、管理不足による菌の増殖に十分気を付けましょう。
梅雨の季節は、食品の保管に注意が必要になりますが、湿度の高さを利用して、 微生物の働きによってより一層食品を美味しくすることもできます。 さらに、納豆を作る枯草菌には、体内に入ると腸のバリア機能を高める作用や、腸内環境をよく改善させる効果など、発酵前の食品にはない効果も期待できます。 衛生管理をしっかり行いつつ、有益な菌との食生活を楽しんでみてはいかがでしょうか。